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S2-27 ダイレクトプッシュFFD計測技術を用いた油汚染土壌調査

第15回地下水土壌汚染とその防止に関する研究集会(2009年)

○佐藤秀之1・田中正利・光畑裕司2・中島善人2・神宮司元治2・西脇淳子2
1(株)ランドコンシェルジュ・2(株)産業技術総合研究所

1.はじめに

近年、産業活動に起因した鉱物油の地下水・土壌の汚染が顕在化しつつある。特に、ガソリン、軽油、灯油、潤滑油などの油類は身近に存在するため、揮発性有機化合物や重金属類に比べて漏洩の調査や対策の必要性は今後も多くあるものと思われる。(独)産業技術総合研究所では、研究プロジェクト『鉱物油等に起因する複合的な土壌汚染の環境リスク評価手法に関する研究』の下で、物理探査やダイレクトセンシング技術を用いた手法による汚染領域の把握調査に関する基礎的な研究を実施している1)。油汚染地というとガソリンスタンドが第一にあげられるが、広大な土地を有する油槽所や工場における調査において油汚染の状況をつかむことは容易なことではない。そこで、筆者等は油汚染調査において、物理探査やダイレクトセンシング技術という土壌のサンプリングを行わない手法が如何に貢献できるか、現場適用実験を通してその可能性を模索している。本プロジェクトでは、国内にある石油関連施設跡地の油汚染現場で、電気・電磁探査調査、ダイレクトセンシング技術として貫入プローブによる揮発成分の検出(MIP: Membrane Interface Probe)、地層導電率の計測(EC: Electric Conductivity、以下ECと呼ぶ)、及び蛍光発光型油検出器(FFD: Fuel Fluorescence Detector、以下FFDと呼ぶ)による油分の検出、地下水サンプリング、土壌コアサンプリング、土壌コアサンプルの導電率計測とTPHの計測(GC-FIDと現地簡易分析)を行った。その中で、本稿ではFFDの結果について報告し、その適用性について検討した。

2.適用実験サイトの概要

モデルサイトは、国内にある石油関連施設跡地で、200m×135mの区域を対象として適用実験を実施した(図-1)。実験サイト内には、地上タンク跡地があり、現在は全くの更地になっている。実験サイトは海が近いこともありほぼ平坦で起伏がほとんどなく、地盤構成は粗砂~中砂主体で、位置により礫が混じっている。調査時の水位はGL-0.7m~GL-1.0mであったが、降雨等の影響を受けて水位が変動しやすい場所である。

3.適用機器と構造
3.1 測定原理


検証には米国製の蛍光発光型油検出器(FFD: Fuel Fluorescence Detector)を用いた。蛍光とは、特定波長の光(励起光)を吸収した分子・イオンが、それにより励起された状態(励起状態)から元の状態(基底状態)に戻る際に長波長の光(蛍光)としてエネルギーを放出する過程をいう(図-2)。

本装置は、芳香族炭化水素化合物に紫外線を照射すると蛍光を発する性質を利用したものである。プローブの側面から照射される紫外線によって励起された油分からの蛍光発光を検出器で捕えることにより、地中の油分濃度と深度ごとの分布を精度良くリアルタイムで検出することが可能である2)3)4)(図-3)。プローブ中には、紫外線光源(水銀ランプ:励起波長254nm)、2つの光電子増倍管(光電効果を利用して光学的な蛍光信号を電気信号に変換する機器)が内蔵されている。光電子増倍管には、それぞれ2種類の光学フィルターが付いており、検出器へ送る波長を分離できる構造になっている5)(図-4)。280nmから450nmのレンジに分離された波長の信号はLFFD(Low FFD)と呼ばれるセンサーへ、450nmを超えるレンジの波長の信号はもうひとつのHFFD(High FFD)のセンサーへ送られる。2つの光学フィルターを用いることにより、油の種類によって蛍光発光スペクトルが異なる性質を利用してそれぞれ、低波長領域(LFFD)では軽質油(BTEX、ガソリン、軽油、ジェット燃料など)、高波長領域(HFFD)では重質油(A重油、C重油、コールタールなど)からなる物質をそれぞれ検出することが可能である(図-5,6)。

3.2 装置の概要

装置は、地中に挿入するセンサー等を内蔵したプローブと地上部のコントロールユニットに分かれる(図-7,8)。FFDの信号は、ケーブルを通してコントロールユニットから記録用コンピュータに伝わる。また、地中に圧入させるために貫入用の機材が必要となる。今回はアンカーを両脇に装備した米国製のCPT(Cone Penetration Test:コーン貫入試験)専用機を用いて調査を行った。当機は通常の打撃貫入によるサンプリング等の作業に加え、2本のシリンダーと油圧チャック、本体に装備されたスクリューアンカーを用いて、押し込み力最大20トンでプローブを圧入することが可能である。また、リモコンにて掘削や設置、調整などの全操作ができるため、操作作業を離れた状態で行うことが可能であり計測や地点の移動時に優れた性能を有する(図-9)。

4.調査地点の概要

東西の2ヶ所の地上タンク跡地に対して、同年2月に行った調査および事前に行った電気・電磁探査調査の結果を元に、東西南北に張った基線上の40地点にて調査を行った(図-10)。地点ごとの調査方法は表-1のとおりである。この中でFFDは10地点、深度4mまで行った。地点の選定は、特に油の分布が予想される場所、油の分布がないと予想される場所とに分けて行い、FFDの調査地点では必ずECと土壌コアサンプリングも行った。

5.結果と考察

FFDの調査を行った10地点において、FFD検出値を踏まえてそれぞれ土壌コアのサンプリング直後にコアサンプルの観察(目視による観察、油臭の確認)を行った結果、各々良い相関を表わしていた。また、これらのFFDによって取得されたデータを補完するために、東西の地上タンク跡地を代表してそれぞれA3地点およびA17地点にて採取した土壌コアサンプルにTPHをGC-FID(Chromatograph Flame Ionization Detector:水素イオン化検出ガスクロマトグラフ)を用いて測定した。FFD(LFFD、HFFD)の検出値とGC-FID分析値の関係を整理した結果を下記に示す。

GC-FIDによるTPH分析値とFFDの検出値(LFFDとHFFD)はレンジの違いはあるものの良い相関を示している。少なくともGC-FIDによるTPHにてある程度の値が計測されたポイントでは必ずFFDの値が反応していることが分かる。FFD検出値の山とGC-FIDによるTPH分析値とのズレが見られる部分は、土壌コアサンプリングを打撃貫入によって行ったため、コアの圧縮が生じていることが原因の一つと考えられる。今回、圧縮して採取されたコアを深度換算する際は均等比率を用いて深度換算を行ったが、実際にはほぼ均質な砂層と思われた対象地質も粘性土の入り具合、含水率、粒度の違い等により一様に圧縮されたとは言えない。また、現地においても簡易キットを用いてTPH測定を行ったが、実際のコアの観察結果やFFD検出値に対し良い相関を得られなかった(実際に油が存在する場所で低い値を示す等)。これは調査時の強い風雨の影響により揮発性成分が飛散したためと考えられる。そのため図-11,12に用いたTPH分析値は土壌コアをサンプリングした直後に、油成分の揮発防止のためPVC製のライナーチューブとゴム製のエンドキャップにて密閉した試料を持ち帰り、ラボにて分析を行った結果である。

6.まとめ

今回の実験結果より、FFDは深度方向の油の計測を行う際に有用な機器の一つであると言える。また、FFDは光学フィルターを用いることにより油の成分を2種に区分することが可能である。また、FFDプローブは打撃により貫入させると内部センサーが破損する危険性があるため、アンカーにより機材を固定し、プローブを圧入させなければならない。そのため、今までは大きな礫が存在する場合や固結した地盤では使用が限定されることがあった。今回の調査ではスクリューアンカーを装備した米国製のCPT専用機を用いたため特にプローブが押しきれない場所はなく、スムーズに作業を行うことが出来た。今後は他の地点における試料に対するTPHの分析と、油種の確認等を行い、より詳細にFFDの可能性について検討していく。

7.謝辞

本研究は環境省委託研究『鉱物油等に起因する複合的な土壌汚染の環境リスク評価手法に関する研究』の下で実施したものである。プロジェクト推進に際しては、産総研 内田利弘氏、駒井武氏、横田俊之氏にお世話になり、また土壌サンプルの分析に際しては、川辺能成氏、坂本靖英氏にご協力頂いた。ここに記して感謝致します。

【参考文献】

1)

光畑裕司・安藤大・上田匠・今里武彦・高木一成・佐藤秀之(2009): 142. 電磁マッピング物理探査技術の油汚染土壌調査への適用研究,第15回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集.

2)

Measuring Fuel Contamination Using In Situ Fluorescence Techniques: Wesley L. Bratton, Ph. D., P.E./James D. Shinn, P.E., Applied Research Associates, Inc.

3)

Use of a Spectrometer with The Fuel Fluorescence Detector: Dr. John W. Haas, Applied Research Associates/Vertek

4)

和地剛・村田均・越川憲一(2002): 115. 重質油蛍光分析装置(FFD)を用いた油汚染のスクリーニング調査,第8回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,P.373~376.

5)

Fuel Fluorescence Detector for In Situ Characterization (2008): Robert Wilson, Vertek Products/Applied Research Associates

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