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S3-15 地下水サンプリング方法の違いによる水質への影響

第18回地下水土壌汚染とその防止に関する研究集会(2012年)

○佐藤秀之1・横溝透修1
1(株)ランドコンシェルジュ

1.まえがき

地下水の試料をサンプリングする方法として、用途に合わせてさまざまな装置(サンプリング機器)が使用されている。装置を使用する際は、求める試料の精度や調査対象となる成分、コスト、持ち運びや使い勝手などによって選択されているものと思われる。しかし、仮にそれら装置でサンプリングした試料の汚染濃度等のパラメータが、地下水中のそれと異なる場合、汚染の範囲や、重要度、浄化方法を選定する際に、間違った結論を導きかねない。例えばVOCsは、吸着や揮発によってその量を損なう可能性が高い。この点について、試料をサンプリングするための装置に着目すると、装置の機構、材質、取扱い方法、容器への移し替えの方法などが、試料の濃度に影響を与える可能性がある。特に、装置の材質は、地下水試料の品質に影響を与えることは容易に推測される。金属や揮発性の高い物質に対する質の高いサンプリング方法として、低流量サンプリングが報告されている1)。特に、ブラダーポンプ(写真-1)を用いた低流量サンプリングが推奨されている2), 3)。ただし、コストの面で、初期投資とランニングコストがかかるため、すべてのサイトで推奨されるものではなく、目的や用途に合わせて選択されるべきである。その際、装置を選定するにあたり、材質や機構が試料にどのような影響を与えるかを予め認識していることは重要である。そこで本稿では、現在国内で一般的に使用されている地下水試料サンプリング装置(ベーラー、チェックバルブ、ペリスタルティックポンプなど)を中心に、それらの装置を用いた際の試料への影響についてまとめられた資料を整理した。それにより、試料のサンプリング方法や、その際に使用する装置そのものが、試料の品質に大きな影響を与えることが明らかになって来た。例えば、井戸の材質(PVC、鉄、ABS樹脂など)より、地下水の水質へのサンプリング装置の影響の方が大きいことが報告されている4)。また、装置を用いて試料を採取する行為も、試料に影響を与える要素の一つである5)

2.試料に与える影響と要因

各種装置でサンプリングした試料に対する温度や圧力の変化は、その化学的性質に大きな影響を与える可能性がある2)。特に、温度は地下水への成分の溶解度と地下水中の成分の揮発に影響を与える。更に、装置に取り込まれた試料は、ポンプの稼働によって生じた熱、太陽の熱によって暖められたチューブ、地下水と外気との温度差や、試料に混入した空気によって暖められる可能性がある。温度上昇の他に圧力の低下によって脱気が起こる可能性もある。深井戸から採取された地下水試料は、地上に回収された際に減圧により脱気が促進される。更に、揚水作業を行うことによって外気が井戸の中に持ち込まれる可能性があり、揮発、酸化、沈殿、吸着、イオン交換を引き起こすことがある。曝気や脱気の結果によって変化が起こる化学的パラメータは、pH、溶存酸素濃度(DO)、無機炭素、アルカリ度、全有機炭素(TOC)、VOCs、アンモニウム、硝酸/亜硝酸、硫化物、シアン化物、モリブデン、水銀、セレン、溶解鉄、溶解マンガン、溶解カドミウム、溶解鉛、溶解バナジウム、溶解ヒ素、溶解リン酸塩があげられる6)

3.実証試験の問題点と装置が与える影響

さまざまな装置を比較した報告が多数ある。合わせて室内試験とフィールド試験の両方が報告されている2)。しかし室内試験は、実際にフィールドで見られる状態を再現することは難しい。逆にフィールド試験は、検体の濃度に大きな影響を与える可能性がある空洞現象(キャビテーション)や脱気、酸化還元電位の変化など、実際の条件下(例えば深井戸)において、さまざまなタイプの装置の能力を比べることを可能にしてくれる。

フィールド試験のデメリットは、試験対象となる検体の実際の濃度が分からないことである。時に、装置によって回収された試料の濃度は、実際の濃度よりもはるかに高い場合がある。対象となる井戸の能力(回復量)より速い速度で井戸から揚水するタイプの装置は、地下水を他のゾーンから引き込んで来る可能性がある。そのため、同じ装置を使用し、異なる流量で揚水した場合でも、異なる分析濃度の試料を提供することがある。また、高流量でのサンプリングは、濁度が高く、大きな粒子が含まれることが報告されている7)。これらの粒子に含まれる鉱物成分が、金属や放射性核種を吸着し、また粒子状物質は無極性の汚染物質を結合させる可能性がある8)。そのため、これら粒子を地下水試料に取り込むことは分析濃度に影響を与える可能性が高い。いくつかの実験では、低流量による揚水(~100 mL/分)は、濁度の低いサンプルの回収と5), 7), 9), 10)、金属の状態の再現性の良さが報告されている7), 10)。合わせて、PAHs(多環芳香族炭化水素)の濃度はベーラーで汲み上げたものより、低流量の揚水ポンプを使用して汲み上げた試料の方がより低いことも報告されている。更に、VOCsをサンプリングするには、低流量によるサンプリングが推奨されている5)。また装置とともに使用されるチューブに着目すると、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)製のチューブは、酸素と二酸化炭素を透過し易く、時には試料中に溶解した化学物質を変化させる可能性がある。逆に、高流量によるサインプリングがそれらガス成分の透過を最小限にすると言う報告もある11)。合わせて、汚染がサンプリング機器から溶出する可能性(例えば、ステンレスからの金属の溶出)も指摘されている。

地下水モニタリングのためのサンプリング用装置を特定の井戸のみで専用で使う方法がある(Dedicated Sampler)。特に、装置が井戸ごとに専用で使われる場合、装置(ポンプやチューブ)は井戸の中に設置したままにされる。またベーラーの場合は、一般的に井戸の中に吊るされたままにされるが、地下水に付けない状態で設置される。これらは、井戸の中に入れたままにすることにより、他の井戸からのコンタミを防ぐ効果が期待出来る。更に、サンプリング装置を出し入れすることによって生じる濁度レベルの増加も除外される7), 9), 10)。逆に、仮に周囲の地下水中の汚染濃度が減少した場合、井戸の中に設置したままの装置に付着、または残留していた汚染物質が脱着(溶出)し、濃度が変化する可能性も指摘されている。しかし、考慮すべきより重要な事項は、井戸の中の地下水と、地下水中に残された装置の長期間の相互作用である。そのため、対象となる装置に使用されている部品の材質は、それぞれの環境に耐性がなければならない。プラスチック、ゴム、エラストマー製の部品は、ときに高い濃度の有機溶剤や原液に耐えうるものでなければならない。また、金属製の部品が腐食される可能性もある。腐食するような状況は、低いpH、高いDO、多くの浮遊物質の存在、高い硫化水素濃度、高い塩素濃度、高い二酸化炭素濃度があげられる12), 13)。更に、柔軟性チューブによる物質の吸着と溶出についての問題についての報告もある5), 14)。

4.サンプリング装置の特徴
4.1 グラブサンプラー

グラブサンプラーにはベーラーがある。ベーラー(写真-2)は、紐でぶら下げた容器を井戸などの中の地下水中に降ろし、引き上げることで試料をサンプリングする装置である。多種・多様な形式、材質があり、標準的なものに、下部に逆止弁がついたオープンベーラー、上下に逆止弁が付いたポイントソースベーラー、更にシリンジサンプラー、ディスクリートインターバルサンプラーなどがある。最大の特徴は、構造が単純で掃除や取扱いが容易なことである。しかし、地下水中を降下させる時や、サンプリングした試料を容器に移す際に、空気が混入する可能性がある。更に、深井戸から試料を採取する場合、地上部で減圧が起こる。また、ベーラーを井戸内の地下水中を降下させる際に乱流を形成し、酸素濃度や試料内の濁度の増加、滞留していた地下水の混合が起こる可能性がある。ポイントソースベーラーを用いると、試料を回収する際に、試料が井戸内の地下水と混合する危険性を減少させることが期待出来る。更に、採水コック(ベーラーの下部に接続し、中の試料を採取する装置。写真-2右下)を用いると、試料を容器に移す際に空気が混入する可能性を減少する。また、地下水の浮遊物質濃度が高い場合や、温度が氷点下以下の場合など特殊な環境では、逆止弁がうまく機能しない可能性がある15)

4.1.1 オープンベーラー

多くの室内試験において、オープンベーラーを用いて有機化合物を回収する方法は良い結果を示しているが、VOCsの回収率は十分ではないという報告もある5)。これは、容器から直接試料を採取したためである。テフロン製の下部取水型のベーラーでサンプリングされた試料は、ヘンリー定数の増加とともに、成分の損失が少ないことが報告されている16)。試験に用いたテトラクロロエチレン(TCE)の損失はわずか5 %であった。他の報告によると、オープンベーラーでサンプリングされた試料の中のVOCsの回収率は、標準液に比べて低いとしている17)。また、2.0~6.0 mの深度からサンプリングした際に、深度が深いほどVOCsの回収率が下がるとしている(2 m:94.2~97.3 %、6 m:90.5~92.2 %)。これにより、VOCsの損失は、深度が増すにつれて大きくなると推測される。また、ベーラーでサンプリングした試料は、ベーラーから容器に移す際に、外気と混合されることにより鉄を沈殿させる可能性がある6)。それを最小限に抑える方法として、ベーラーに直接チューブを接続し、試料を容器に移す際に、容器の底にチューブを付けながらベーラーを静かに反転させることで空気との接触を避ける方法が提案されている。

フィールド試験において、オープンベーラーでサンプリングした試料中のVOCsの回収率は、他のタイプのサンプリング装置とは統計的に変わらないとしている18)。しかし、これらの試料は、比較的浅井戸から採取されたものである。また、テフロン製の従来型のベーラーでサンプリングした試料と、ヘリカルロータ式ポンプを比較した際に、ベーラーを用いてサンプリングした試料中のDCE(ジクロロエチレン)とTCE(テトラクロロエチレン)の損失が少量(7 %以下)であることが確認された19)。他のフィールド試験では、反応性の高い物質のサンプリングには、他の装置を用いた方が良いとされている。他の装置で回収した試料に比べて、ベーラーで回収したものはかなり多くの金属類の損失(鉄が12 %、水銀が20 %)が確認された4)。合わせて、装置を地上に上げた際の試料の減圧が揮発性物質の損失に影響を与えていると推測している。オープンベーラーでサンプリングした試料では、採水コックを使用したベーラーと他のポンプ(ブラダーポンプ、エア駆動式ピストンポンプ、ヘリカルロータ式ポンプ、渦巻きポンプ)によってサンプリングされた試料に比べて、VOCsの回収率は低く、ばらつきが大きいとの報告がある20)。また更に、6か所におけるフィールド試験によって、ベーラーでサンプリングした試料中のTCEとトランス-1,2-DCEの回収率が、渦巻きポンプに比べて低い(25~88 %)ことを報告している。また、採水コックを併用したオープンベーラーによる試料のサンプリングでも、VOCsの回収率は改善が見られなかった。また、ステンレス製ベーラーの下部取水型を使用した試料は、低流量(200 mL/分以下)の電気式ギヤ駆動ポンプでサンプリングした試料と比べて、濁度レベルが1桁分高いことが分かった21)。合わせて、微粒子の大きさと組成が異なることを観察した。更に、コールタールで汚染されたサイトで、ベーラーでサンプリングされた試料の中のPAHsは、ペリスタルティックポンプ(20 mL/分で揚水)と比較して1桁高い値であった。

4.1.2 ポイントソースベーラー

室内におけるポイントソースベーラー(写真-3)を用いたVOCsのサンプリング試験では、著しい濃度の低下は見られなかった5)。しかし、酸素とメタンのサンプリングに関しては、標準液に対して精度の高い結果は得られなかった。また、採水コックとテフロンコーティングされた紐を用いたポイントソースベーラーの能力を確認した結果、VOCsの回収率は、標準液と比較して90.6~94.9 %であった22)。更に、ヘリカルロータ式ポンプ、ペリスタルティックポンプ、ブラダーポンプと比較しても、試料の回収率は優れている。ただし、採水コックを差し込む際に、気泡がベーラーの中に取り込まれると、揮発性物質の脱気が起こる可能性があると推測している。合わせて、試料に与える最大の要因として装置を使用するオペレーターの技術を引き合いに出している。

しかし、フィールド試験でのポイントソースベーラーの評価で、いくつかの試験でVOCsの回収率が悪い結果が出ている(主に10 %のVOCsが減少)。ポイントソースベーラーでのTCEの回収は、かなりばらつきがあることが分かった23)。オープンベーラーとポイントソースベーラーでサンプリングした試料すべてが、精度が低いと言う結果も報告されている18)。これはサンプリング作業を行う人によってばらつきがあることが原因と考えられた。合わせて、浅井戸でのVOCsのサンプリングの場合、他の装置に比べて比較的良い精度があることを確認した。しかし、最近の研究によると、ポイントソースベーラーでサンプリングしたVOCsの試料は、ヘリカルロータ式ポンプなどに比べて著しく悪い結果(9~11 %の損失)が報告されている24)。更に、採水コックを用いることによって、VOCsの回収率が8 %増加し、精度が上がることも確認している。また、ベーラーの性能が、それを使用する人と現場条件に大きく依存すると言う報告がある5)。合わせて、同じオペレーターが行っても、ばらつきがあることを示している20)。また、ベーラーをもし各井戸で専用としなかった場合、ベーラーに使われる紐がコンタミの原因になる可能性がある。ナイロン紐(カプロラクタム)から溶出する成分が試料を汚染するという報告もある25)

4.2 吸い上げ式装置

吸い上げ式の装置(Suction Lift Devices)には、渦巻きポンプ(Surface Centrifugal Pumps)や、ペリスタルティックポンプ(写真-4)があげられる。これらポンプは、地表面から地下水までの距離が6~8 m以内のときのみ有用であるとされている26), 27)。これらのポンプは、地下水の試料を吸い上げる際に、試料の減圧と脱気を起こす可能性があるため、揮発性の物質に対して向かない可能性がある。吸い上げ式の装置を使用することによって、VOCs濃度の低下とともにヘンリー定数が増加することが確認されている16)

4.2.1 ペリスタルティックポンプ

いくつかの研究で、ペリスタルティックポンプでサンプリングした試料中に溶解している化学物質が著しく変化(被酸化性、揮発性無機成分、揮発性有機成分の減衰、脱気による変化など)していることが報告されている。室内実験では、標準液に対して、VOCsが4.1~16.1 %減少することが報告されている5)。フィールド試験では、ブラダーポンプと比較して、pHのわずかな増加と、アルカリ度(4 %)、溶解固形物、DO(18 %)の減衰が確認された4)。同じく影響を受けた物質として、ボロン(7~17 %)、バリウム、ストロンチウム、低濃度のアンモニウム、水銀、モリブデン、セレンの減少があげられる。脱気は、ポンプで揚水することによって、試料が部分的な真空状態になるためである4)。そのため、揮発性物質など、脱気により影響を受け易い物質には使用を避けるべきであるとしている。また、フィールド試験では、他のサンプラーに比べてペリスタルティックポンプでサンプリングした試料は、VOCs濃度が著しく低い値を示すことが分かった18), 28),。ペリスタルティックポンプを使用して採取した試料のVOCs濃度は、ブラダーポンプに対して4~70 %低いことを示している18)。ガスを封入した地下水を用いた室内試験では、標準液に比べて63~94 %の揮発性物質の回収を確認した28)

更に、一般的に、地下水サンプリング用の装置に使用するチューブは、より堅く、より不活性な材質が使用されるが、ペリスタルティックポンプの場合、ポンプの可動部に柔らかい素材のチューブ(例えば、シリコン製のゴムや可塑化PVC)を使用する。2つの研究によって、浅井戸であっても、ペリスタルティックポンプに使用されるチューブの材質は、対象物質の濃度に対して著しい影響を与えることが分かった19), 29)。VOCsの濃度がシリコンによって著しく減衰することを示している。しかし、この問題は、ポンプの可動部を除いたすべてのサンプルラインを、より堅いPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のチューブに交換することによって解決出来ることが発見された。TCEと1,2-ジクロロエチレンのサンプリングにおいて、すべてのチューブをシリコンにした場合は、可動部のみシリコン、他の部分にすべてPTFEを使用した場合に比べて、約8~14 %低いことが分かった。4つのパラメータ(採水ラインの材質:シリコンとPTFEを併用、揚水量:2.0と4.0 mL/分、揚程:0.9、2.4、4.8 m、有機物の濃度:2~18 ppbと11~91 ppb)を比較して統計的分析を行ったところ、採水ラインがペリスタルティックポンプにとって最も重要な変数であることを確認した29)。更に、低流量によるサンプリングが高い回収率を生むが、4.8 mより深い場所での使用は控えることを推奨している。また、ヘンリー定数が10-2 atm・m3/mLより大きい揮発性物質の回収には、揚水量、汚染濃度、揚程すべてが影響を与えることを確認した。4.8 mからの揚水は、揮発性化合物に対して15~20 %の損失があった。別の室内試験では、浅井戸におけるVOCsの回収率が高いことを示している(テフロンチューブを使用)22)。 逆に、低流量(20 mL/分)でペリスタルティックポンプを用いて汲み上げた試料より、ベーラーを用いたものの方が、PAH濃度が高いことも報告されている21)。合わせて、ベーラーでのサンプリングに比べて、フェナントレンが26倍、ベンゾ(a)ピレンが750倍濃度が増加する。更に、ベーラーに比べて、ペリスタルティックポンプは(低流量で、揚水管にステンレス製のチューブを使用)、移動性の高い汚染物質に対してはより正確に試料をサンプリングすることが可能であると報告している。

4.3 イナーシャルリフトポンプ

イナーシャルリフトポンプ(Inertial-Lift Pump)は、慣性を利用した採水装置で、チェックバルブ(写真-5)が代表例である。この装置に対する報告は非常に少ないが、フィールド試験で、ガスをチャージした水を用いてVOCsの回収試験を行った報告がある30)。これによると、イナーシャルリフトポンプとブラダーポンプは同じような回収率を示している。更に、ペリスルティックポンプと比べると非常に良い結果を示している。室内試験では、ブラダーポンプと比べてVOCsの回収率が13~19 %高い値を、標準液と比べても非常に高い値を示している。同じ報告で、濁度やDOについての記載がない。恐らく、揚水する際に装置とチューブ全体を上下する必要があり、地下水の流動を促すこれらの装置は、滞留した水の混合と、酸素レベルや濁度の増加を起こすため敢えて試験されなかったものと推測する。他の報告を見ると、イナーシャルポンプによるVOCsの回収能力試験の結果は65.95~99.85 %と低い値を示した31)。しかし、その原因は使用したポリエチレン製チューブに吸着されたためとしている。

5.おわりに

ある条件下では、ほとんどすべての装置は、脱気と、被酸化性無機化合物、揮発性無機化合物、揮発性有機化合物の損失を促し、重大な問題が起こる可能性がある。そのため、機器ごとに影響を受け易い条件下でのサンプリング時には使用すべきではないと言える。例えば、多くの研究において、ペリスタルティックポンプによる揮発性や被酸化性の成分の著しい損失が見られた。しかし最近の研究によると、低流量でのサンプリングを行った場合、ペリスタルティックポンプは、金属や疎水性有機物のサンプリングに利用できる可能性があると述べている。更に、ペリスタルティックポンプにサンプリングヘッド(吸引側のチューブに採水用の容器を接続)することにより、VOCsの高い回収率89.32~98.05 %が報告されている31)

グラブサンプラーの場合、ポイントソースベーラーを採水コックとともに使用した場合、VOCsのような揮発性の高い物質のサンプリングでも高い回収率が期待出来る。また、一般的にブラダーポンプは、VOCsなど影響を受け易い成分の回収において、総合的に一番良い装置であると紹介されている2)。しかし、そのブラダーポンプでさえ、井戸ごとに専用で使用されていない場合、成分の損失があるとしている。更に、適切に汚染の除去が行われなければ、コンタミが発生する可能性も指摘されている。

改めてサンプリングされた試料の品質に影響を与える要因として、装置の構造や機構、材質、容器への移し替えの方法、流量、更にその装置が専用で使用されているか、装置を使用する人ごとの個人差があげられる。整理した結果を見ても、同じ装置を用いて実験を行った報告でさえ、その評価にばらつきがある。その原因として、材質や各実験で使用された対象物質、使用した人の個人差があげられる。逆に、同じ装置に対していくつかの物質に対する違いを確認した報告もある31)。これらの報告を参考にする場合、実験が行われた時の状態を正確に把握するとともに、自ら確認作業を行うことを推奨する。

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S2-22モニタリング井戸に使用する井戸材の選定

本稿では、米国環境保護庁(USEPA)が作成した資源回復法(RCRA)の地下水モニタリングガイダンス3)をもとに、モニタリング井戸に使用する井戸材の選定方法について紹介する。

S1-22 ダイレクトプッシュテクノロジーの世界的動向

ダイレクトプッシュテクノロジーは、表層調査において押し込み、打撃、またはバイブレーションを用いてロッドを土中に押し込む技術の総称である1)2)

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