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S5-7 ダイレクトセンシング技術の評価と精度向上へのアプローチ

第16回地下水土壌汚染とその防止に関する研究集会(2010年)

○佐藤秀之1・Tom Christy2・Dan Pipp2
1(株)ランドコンシェルジュ・2Geoprobe Systems

1.はじめに

米国では1990年代から土壌コアを採取することなく原位置で汚染状況を調査するダイレクトセンシング技術の開発や、それらを用いた手法による汚染領域の把握調査が積極的に行われてきた。ダイレクトセンシング技術は、ロッドの先端に取り付けた特殊なプローブを用い、それらを所定の深度まで貫入する間に、深度方向に対する鉱物油やVOCs(揮発性有機化合物)の汚染分布、地盤の特性の違い等を探査するためのシステムである(図-1)。例えば、油汚染地というとガソリンスタンドが第一にあげられるが、広大な土地を有する油槽所や工場における調査において油汚染の状況をつかむことは容易なことではない。そこで、ダイレクトセンシング技術を用いることにより、まずは汚染濃度範囲の絞込みや汚染物質の有無を判定するために行われる多数の資料採取や試料分析、井戸の設置本数を削減することが期待できる。さらに、現場においてはリアルタイムで汚染状況が把握出来るため、逐次調査計画を変更しながらより有効で適切な調査を行うことが可能である。同時に状況に応じて調査ピッチを狭くすることによって、より詳細で連続的な汚染状況や地質状況の確認を行うことも可能である。本稿では、ダイレクトセンシング技術の一つであるMIP(メンブレン・インターフェース・プローブ)システムを用いて、油汚染現場で測定試験を行い、当システムの評価を行った。また、近年MIPシステムの精度向上を図るため、いくつかの点で機器の改善を行ってきた。その効果と従来器との比較について報告する。

2. システムの概要と原理1)2)

当システムは大きく分けて、プローブ、深度計測器、コントローラー、トランクライン、フィールドコンピューター、検出器からなる(図-2,3)。検出器にはPID(光イオン化検出器)、FID(水素炎イオン化検出器)、XSD(ハロゲン選択型検出器)など用途や対象物質によって、1個、もしくは複数の検出器を選択することが可能である。また、プローブは打撃貫入式のリグやCPT用の圧入機を用いて地中に貫入する(図-1)。

図-4にプローブ部分の模式断面図を示す。プローブ側面にあるヒーターで近傍の土壌中に存在するVOCsを熱することにより、VOCsの揮発を促進する。揮発したVOCsはメンブレンを通してプローブ内に入り、内部を流れるキャリアガス(窒素ガス)によって、地上の検出器まで運ばれる。また、地盤の導電率を測定する電極(ダイポール・ダイポール法)が備わっており、プローブを貫入させながら連続して地盤の導電率を計測することが可能である。なお、当システムは成分の同定はできず、あくまでVOCsの総量を測定することとなる。そのため、汚染物質を同定、または定量するためには別途必要に応じて土壌コアの採取を行い、サイトごとにMIPによる測定値と比較する必要がある。

3. サイトでの測定試験の事例
3.1 サイトの概要

試験サイトは、米国カンザス州サライナにあるガソリンスタンド跡地で、現在は更地になっている(図-5,6)。当サイトでは、1980年代にガソリンや軽油等の鉱物油の漏えいが確認されているが、当スタンド閉鎖後に地下タンクの撤去が行われたのみで、現在まで浄化は行われていない。地下タンクが設置されていた位置は、図-7の青い円の付近で、地下水の流向は北西から南東方向である。筆者等は当サイトにてMIPシステムを用いた測定試験を行った。図-7に、MIPの貫入地点を示す。サイトの北西から、A, B, ~, Jと流向に垂直になるようにラインを取り、それぞれサイトの北東から順に1~18の地点を設置した。ただし、個々の貫入地点はサイトの状況に合わせて適宜ずらして測定を行ったため、地点ごとにシステムに付随したGPSを用いて正確な座標を記録し、最終的な貫入地点とした。なお、図-7上には便宜上、貫入地点の一部のみを示している。

3.2 サイトでの測定結果と評価

図-8はH-10地点(図-7の赤丸部分)のMIPによる測定データである。グラフ左から、地盤の導電率(紫色のグラフで表示)、PIDによる検出値(緑色のグラフ)、FIDによる検出値(ピンク色のグラフ)、XSDによる検出値(水色のグラフ)を表す。縦軸には深度、横軸にはそれぞれ地盤の導電率(電気の流れやすさ: mS/m)、検出値(μV)を示す。青色の線はダイレクトセンシング技術の一つであるHPT(ハイドローリック・プロファイル・ツール)を用いて測定したH-10地点での地下水面を示す。

地盤の導電率の測定結果から、粒度の違いはあるものの、H-10地点は地表からGL-8.0m位まで粘性土層が続いている。またGL-8.0~15mまで砂質土層主体となっている。ここで、導電率の結果とPID、FIDの値を比較すると、粘性土層の下部(砂質土層上部:GL-8.0~9.0m)に汚染濃度の高い部分が存在する。また、地下水面に向かって濃度が減少するも、粘性土層中にも汚染が分布することが分かる(GL-6.2~8.0m)。H-10は地下タンク設置場所ではなく、この地点で油の漏洩が確認された報告がないため、タンクから漏洩した油が地下水の流れに乗って、砂質土層中を移動したものと推測する。その後H-10地点で油が長期にわたり滞留したため、地下水面に向かって粘性土層中を汚染物質が上方へ広がったものと推測する。

図-10はB16からB07地点を結んだライン上(図-9の赤いライン)の断面でB16、B14、B12、B09、B07における地盤の導電率(紫色のグラフ)とPIDによる検出値(緑色のグラフ)を一つのグラフにまとめたものである。また、B14、B12地点で観測した地下水面をこのラインの地下水面としてグラフ上に青色の線で記載した。ここでB14、B12(左から2番目、3番目のグラフ)は地下タンクが設置してあった場所にあたる。

図-10を見るとB14、B12地点にてPIDの検出値が地下水面より上にあることが分かる。また、PIDの検出値のピークは地下水面下の粘土層下部(砂質土層上部)にも存在する。

図-12はA14からH-10地点を結んだライン上(図-11の赤いライン)の断面でA14、B14、D14、F12、H10における地盤の導電率(紫色のグラフ)とPIDによる検出値(緑色のグラフ)を一つのグラフにまとめたものである。また、B14、H10地点で観測した地下水面をこのラインの地下水面としてグラフ上に青色の線で記載した。ここでA14、B14は地下タンクが設置されていた場所である。地下水の流向はA14からH10方向で、A14-H10断面は地下水の流向に概ね平行なラインにあたる。

図-12を見るとA14、B14地点にてPIDの検出値が地下水面より上に存在することが分かる。また、D14、F12、H10では粘性土層の下部(砂質土層の上部:GL-8.0~9.0m)にPIDの検出値ピークがある。さらに地下水面に向かって粘性土層中に汚染が広がっていることが観測できる(GL-6.0~8.0m)。

3.3 MIPによる測定結果を用いた評価

当サイトはすでに油漏洩場所となった地下タンクの位置が分かっているが、逆に汚染場所が特定されない場合、年間を通しての地下水位の変動を正確に観測した上で、MIPによる検出値と地下水面との関係を比較することにより、油漏洩箇所を推測する材料となりえることが分かる。また、地盤の導電率の結果と比較することにより、汚染の広がりが推測できる。これらの結果をもとに、調査ピッチを狭くすることにより、より正確に油の広がった範囲を特定することが期待できる。また、深度方向に対して連続的なデータを取得できるため深度方向の汚染の見落としを防ぐことも期待できる。

4. MIPシステムの改良

ダイレクトセンシング技術は便利である反面、そのシステムは土壌や地下水を採取するためのツールに比べて強度が劣る。特にMIPはダイレクトセンシング技術の中で押し込み専用のビデオコーンやFFD(フューアル・フルオレッセンス・ディテクター:蛍光発光型油検出器)3)とは異なり、貫入の際に打撃を併用することができるため、機材の消耗や各接続部の奪着、劣化、摩耗等が起こりやすく、システムに不具合を起こす危険性が高い。そこで、筆者等はサイトでこのような事態が起こることを想定し、これまでいくつかのチェック項目を用意して来たが、それでも問題が発生した場合、システムを復旧するのに数分から、ときに数時間を要することがあり、ダイレクトセンシング技術の特性が生かされない事例が多々あった。

また、同じくMIPはメンブレンから取り込んだVOCsが検出器まで到達する間に、30m以上のテフロンチューブの中(状況によりラインの長さは変わる場合がある)を通過して来るため、その間チューブ内にVOCsが残留する可能性がある。特に高濃度の汚染やホットスポットをプローブが通過した場合に、この状況が顕著に現れる。これは、プローブ側面にあるヒーターブロックで熱せられ、揮発したVOCsがライン内を通過する間に冷やされて凝縮されチューブ内に残留するために起こり、英語では“Tailing Effect”と呼ばれている。

これらを改善するため、筆者等は積極的にサイトでの情報を収集し、システムの改良を施してきた。下記にその内容を示す。

4.1. 強度の改善

システムの強度不足を補うために行った改善内容を下記に示す。

1)ドライブクッションの使用ツꀀ

1999年からMIPを押し込むための掘削機の能力が上がり、機器を破損する可能性が高くなったため、動力部となるヘッド部とロッドの間に緩衝材となるツールを用意した(図-13)。

2)プローブ径の変更

上記掘削機の仕様変更に伴い、貫入に使用するロッドやプローブ自体の径を大きくし、強度を増やした。

3)各接続部の強化

接続部の脱着による不具合を減らすため、各接続部の強度を改善した。また、配線の接続部にコネクターを使用して、配線の脱着や毎接続時の損傷を防ぐ構造に変更した(図-14)。

4)サーモカプラの使用

これまでプローブ内に埋め込まれていたサーモカプラ(温度検出器)を交換可能な状態にし、破損等不具合が生じたい際に、簡単に交換できるような構造とした(図-14)。

5)シールキットを用いたシーリング

プローブとケーブルの接続部に、外部からの泥水の浸入を防ぐため、これまで耐水性のシールテープを使用していたが、打撃を併用するため密閉度が不十分であった。そこで、今回ラバー製のシールキットを用意することによって、シーリングを確保し、接続や交換も簡単に行えるように変更した(図-15)。

4.2. ライン内のVOCsの残留の改善

土壌のVOCsを熱してメンブレンの中に取り込む際、プローブ側面にあるヒーターブロックの温度は通常80~125℃に保つように調整されている。しかしプローブを地下水面下に入れると、温度の戻りが悪く、VOCsが揮発するための温度に達しない内に次の深度に進まざるを得ない場合があった。そこで、前述のようにプローブの径を大きくした際に、合わせてヒーターブロック内の電熱線のワット数を上げることにより、地下水面下での温度の回復時間を改善した。

また、別途ライン内のVOCsの残留問題については、ヒーティッド・トランクライン(以下、HTLを呼ぶ)と呼ばれるラインを使用することにより改善を図った(図-17)。これは今までキャリアガスを運ぶのにテフロンチューブを用いていたが、プローブからこのチューブを伝わって地上の検出器にたどり着く間に、取り込んだVOCsが冷えて凝縮を起こし、ライン内に残留してしまうことが多くあった。これを防ぐためテフロンチューブをステンレス製のチューブに変更し、チューブ自体を常に80度以上の温度で温め続けることにより、凝縮を防ぐことが期待される。これにより、VOCsのライン内の残留を防ぐことが可能となり、プローブが高濃度の汚染を通過した後も、濃度低下を待つ時間が大幅に改善された。図-18,19に実証試験の結果を示す。従来型のラインに比べ、HTLを用いた場合ではPIDの反応値が鮮明になっていることが分かる。また別の効果として、これまで高い濃度の汚染を浅い部分で拾った場合、それより以深の汚染分布の状態(例えば、高濃度部分がどの深度まで続いているか。または他に細かい汚染の深度分布がないか)をつかむことが可能となった。さらに修得するデータのピークも高くなり、これにより相対的なデータの比較が可能となった(図-18,19)。また、図-20は5 mg/L濃度のベンゼンでのPIDを用いた反応強度の違いを、図-21は5 mg/L濃度のPCEでのXSDを用いた反応強度を比較したものである。これによりHTLによる反応性の良さが確認できる。

【参考文献】

1)

Christy, T. M., 1996, A Permeable Membrane Sensor for the Detection of Volatile Compounds in Soil, presented at the 1996 National Ground Water Association’s Outdoor Action Conference in Las Vegas, Nevada.

2)

高木一成・深田園子(2006): ダイレクトセンシング技術を使用した油汚染の分布調査,土と基礎,Vol.54,No.5,19-21.

3)

佐藤秀之・田中正利・光畑裕司・中島善人・神宮司元治・西脇淳子(2009): ダイレクトプッシュFFD計測技術を用いた油汚染土壌調査,第15回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,S2-27 p.58.

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